ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)が要支援や要介護の
要因である事は以前当コラムでもご紹介させていただきました
が、筋肉量を落とさないようにするためには、運動を習慣化す
る事や、高齢者にこそ筋力トレーニングが必要となります。
ところが、健康を維持するためには、運動に加え 食事(栄養)
も重要です。せっかく頑張って運動しても、栄養が足りていな
かったら、逆に筋肉量が減ってしまう可能性もあります。
ロコモ予防のポイントは「たんぱく質」です。今回はロコモ予
防とたんぱく質の関係性についてをご紹介します。
1.「たんぱく質」1日の摂取量は?
ロコモを予防する鍵は「筋肉」です。筋肉量を維持・増加させるためには、その材料となるたんぱく質が必要です。現在の筋肉量を維持するためには、
一日に体重1㎏あたり1gのたんぱく質が必要です。
筋肉を増加させるためには1.2~1.5g程度のたんぱく質が必要となります。
引用:佐藤 信紘『ハッピーエイジング リズミカルに生きると体は老いない』毎日新聞出版,2020/11/2発行
2.糖質制限で筋肉量が低下する!?

現在の日本人のたんぱく質摂取量は1950年(昭和25年)戦後物がない頃と変わらないのが現状です。(グラフ参照)
ところが、たんぱく質だけを摂っていれば良いかと言えばそうでもありません。
筋肉を動かす時のエネルギーとなる炭水化物(糖質)や脂質が不足していると、運動時のエネルギーをたんぱく質から得ようとするため、結果として筋肉量が減少してしまう可能性があります。
まだロコモは気にならないけど、メタボを気にする40・50代の過度な糖質制限は、将来のロコモ予備軍になる可能性があります。
筋肉量を増やすためには糖質不足に注意しましょう。

※たんぱく質摂取推移
厚生労働省国民健康・栄養調査より引用・改編
3.カルシウムだけでは骨は強くならない
高齢者(特に女性)の場合、骨粗しょう症で悩まれている方も多いと思います。骨がもろくなると、骨折のリスクも上がって しまいますので、健康で丈夫な骨を維持することが大切です。
骨と言えば「カルシウム」と連想される方が多いと思います。間違いではありませんが、骨を強くするためには、
「骨量」と「骨質」を考える必要があります。
骨量はカルシウムをしっかりと摂る事で補えますが、骨質は「コラーゲン(たんぱく質)」が必要になります。

●骨量を補う栄養素
カルシウム(牛乳、小魚など)
●骨質を補う栄養素
たんぱく質
(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など)
カルシウムやたんぱく質以外にも、骨粗しょう症の予防のためには、カルシウムの吸収を助けるビタミンD(魚介類やきのこ類に多く含まれる)や、カルシウムを骨に沈着する際に必要なビタミンK(野菜に多く含まれる)などの栄養素も必要になります。
栄養素は一つだけで全てを賄えるものではありません。お互いの栄養素が助け合いながら作用しますので、バランスの良い食事が必要なのです。
しっかりと食べて体を積極的に動かす事がロコモ予防の大原則です。
しかし、バランスの良さを重視し過ぎてしまうと、長続きすることが難しくなります。
あまり肩ひじをはらずに、1週間の中でバランスを整える程度の意識からはじめてみましょう。